酒蔵を訪ねて

信州地酒の競ひあい(大信州酒造編)
「信州は日本の屋根-水・米・空気3つの最高が最高の酒を醸しだす。」
下原多津栄

当店の蔵元11のうち杜氏暦60余年全国最長老小谷杜氏
「下原多津栄」氏信州の地酒を語る。

 

信州、長野の県歌「信濃の国」ほど県民に愛され歌われている歌は無いであろう。[うた]のごとく北アルプス、南アルプスに代表されるようにそびゆる山々はいずれも高く、松本・伊那・佐久・善光寺の4つの平野[たいら ]は肥沃の地であり、まさに日本の屋根である。高大な山々が育んだ清冽な「名水」。肥沃の地が育んだ酒造好適米「美山錦」に代表される「米」。そして信州の自然が育んだにごりの無い爽やかな「空気」。この3つが一体となって、信州の名酒が生み出されると下原杜氏は言う。

 

そしてまた、この3つ頼るだけでなく、「水」「米」「空気」を大切にするからこそ名酒が生み出されると杜氏は言う。事実、杜氏の蔵元「大信州酒造」では、米を昔ながらに自家精米している。米を見極め、米を選び、選んだ米は、大切に自分で精米し確認する。さらに、米を見て初めて、精米歩合を決める。杜氏は精米された信州の代表的な酒造好適米「美山錦」を手に熱っぽく語った。

 

また、「水」を探し求め続けたが、結局杜氏の故郷[ふるさと]北アルプスの山にある小さな村「小谷村[おたりむら]」の水に行き着いたのだとも語った。

 

さらに、杜氏は名水を愛すれば自ずと水もよくなるものだと語る。事実、杜氏の蔵の酒樽には、「愛」「感謝」の文字が書かれた紙が貼られていた。名水に頼ってばかりではいけない。自然に、水に愛情を注ぎ、感謝をし、大切にするからこそ「水」はさらに、生き生きとし、以前にも増して美味くなっていくものであると断言した。

 

そして信州の自然が育むにごりの無い「空気」の中に漂う野生の純粋な「酵母」。信州の自然だからこそ生まれた野生の純粋な酵母である。まさに、信州の地酒は、信州の地の恵みであり、信州を愛するからこそ生まれるものである。

 

しかし最終的には、杜氏の「技」が信州の地酒を作る。しかし、下原杜氏は60余年も培い、磨いてきた「技」を決して自慢げに語ろうとはせず、蔵人たちの「和」が作るものだと語る。「和」をもって尊しとするものだと。蔵人たち一人ひとりの地道な努力の積み重ねであると語る杜氏。蔵人の話になると途端に笑顔になる。信州の自然に感謝し、人を愛するからこそ酒が生まれると。控えめな人である。18年ぶりに18年間育った故郷信州に戻ってあらためて信州に生まれたことに感謝したい。信州の自然と信州気質が育んだ11の蔵の地酒。誇りを持っておすすめいたします。

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